『天気の子』レビュー

生きていることの素晴らしさや、人生が与えてくれる美しさ、輝きといったものを純粋に感じさせてくれるアニメ映画は、やはり大切なものだと思います。

新海誠監督は、ほぼすべての作品で、この重要な要素を捉えることに成功していると思います。特に大ヒット作『君の名は。』には、世界中の観客が魅了されました。新海監督の最新作『天気の子』は、『君の名は。』の魅力を再現することに成功しただけでなく、感情面でも満足のいく形でそれを実現しています。

この作品は、日本が常に雨や悪天候に悩まされている世界を舞台にしています。高校を中退した森嶋 帆高(もりしま ほだか)は、新生活を始めようと上京し、様々な困難に遭遇しながら、都市伝説の出版社を経営する須賀 啓介(すが けいすけ)に雇われます。

帆高は、天野 陽菜(あまの ひな)と偶然に出会います。そして、陽菜が世界に一時的に太陽の光をもたらす能力を持っていることを知ります。

帆高は陽菜にその能力を役立ててほしいと言い、陽菜の弟・凪(なぎ)を加えた3人で、東京中の様々な人たちに有料で光を提供することにします。帆高と陽菜の距離が縮まるにつれ、恐ろしい現実が明らかになっていきます。

映画の随所に、新海監督のアニメーションやストーリーテリングの手法が現れています。話の全体で地球の素晴らしさを描いており、それだけでなく、登場人物一人一人を感情的に結びつけることにも成功しています。こうして『天気の子』は、人の心を揺さぶる作品に仕上がりました。異世界を舞台にした物語ですが、観客は登場人物に共感し、親近感を覚えることができると思います。

観客は帆高、陽菜、凪、須賀をはじめ数々の登場人物が、映画の中で成長し、進化していく様子を見つめていくわけですが、その成長は一目瞭然です。それが最も顕著なのが帆高で、「東京に逃げれば大人になれる」という夢の世界に生きる、もの知らずの子どもから、責任ある大人になるには何が必要なのかをようやく理解した十代へと変化していくのがはっきりと分かります。多くの観客がこれに共感できると思います。みんな、自分の人生でも同じように自己発見をした経験があるからです。

帆高は、安易な道を選んだ自分の愚かさに気づき、その代償を払うことになるのですが、それもすぐにわかります。同様に、須賀の行動も、現代の大人の間では極めて頻繁に見られるものです。

陽菜の場合は、帆高と同じように子どもの目線で世界を見ているものの、それは母の死や弟の世話といった現実に直面し、無理に大人になろうとしている子どもの目線です。陽菜は自分のさまざまなことを犠牲にしようとしており、そこから観客は、陽菜と凪のように日本で孤児として残されてしまうことがどんなに大変なことなのかを感じ取ることができます。日本で生き残るためには、とにかく自立しなければならないのだ、と。